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塚原拓海「結晶の子供たち」

開催期間2018年10月6日(土)~2018年11月18日(日)
休館月-金, 10/20-21
時間12:00-19:00
会場awai art center
ホームページhttps://awaiartcenter.tumblr.com/
住所長野県松本市深志3-2-1
お問い合わせ先awaiartcenter@gmail.com
10月6日より、塚原拓海「結晶の子供たち」を開催いたします。

塚原はこれまでことばや機械を用いて、ここにあるようでここにはない、記憶の裏側にあるようなイメージを喚起させる作品を制作してきました。
近年ではその要素がことばのみに削ぎ落とされ、状況のかすかな揺れや変化を気にかけながらより純度の高い機微の操作を目指します。

本展では過去作の再構成に加え、新作《結晶の子供たち》を発表します。ある物語を起点にフィクションとノンフィクションを行き来し、鑑賞者を日々の波間に誘います。

作家の県内では初めての個展となります。ぜひご高覧ください。

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[作家プロフィール]
塚原拓海|Takumi Tsukahara
1994年、長野県塩尻市生まれ。嵯峨美術大学メディアアート分卒業。
好きな食べ物はせみ餃子。食べられないパンはフライパン。最近松本に引っ越したみたい。
◉作家website|http://luvofschiz.web.fc2.com/

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[開催概要]
会 期|2018年10月6日(土)〜11月18日(日)
    12:00-19:00、土日のみオープン
    ※10/20,21は休廊いたします
入場料|¥400(後日再入場可、awaiで使えるチケット付き)


〈オープニングレセプション〉
日 時|10月6日(土) 18:00-
◉入場無料、予約不要

〈アーティストトーク〉
日 時|11月18日(日)16:00-17:30
参加費|¥500(+1drink oeder)
要予約|awaiartcenter@gmail.comまで / 店頭にて
◉展覧会鑑賞チケットが必要です
◉終了後クロージングパーティを行います

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   結晶の子供たち




 たぶん過去のこと、駅の隣のモールにいた。ララ、そこでは時々古物市が開かれていて、着古した衣類や雑貨などの様々な露店が、寂しげに並ぶ。僕が帰りに通りがかったときには、終了時刻が近い様子で、人気のほとんど絶えた廃品の森の中に、店主の女の子たちが、ぽつりぽつりと、客引きのように立っていた。
 なぜここを通ろうと考えたのか、今となっては思い出せないけれど、ここの名物は、その店舗設計にあるらしい。一番端の区画の、抜けられそうな細い道、陳列棚の迷路をたどり、入り組んだハンガーラックの角を曲がる。そこは行き止まりだ。
 しまった、引き返そう、と思ったとき、
「これなんていかがですか」
 小柄な女の子が服を手に立っていた。勧められたのは、刺すようなピンクのブルゾン、外側は同色のゴーストに包まれた、とにかくぞっとするものだった。
 何のご挨拶だろう。今日の不況の原因は僕にあるとでも言いたいのか。
「大きさ合わないんじゃないかな。
君が着てたやつだよね?」
「うん、
合わないだろうね。
サイズはいくつ?」
「173」
「あー、大きいんだね」
 面と向かって笑う女の子は意外と大きく、そんなに僕と変わらない気がした。




  私のこと占ってくれる?
  いいよ、座って
  一分間
  それから彼女に
  ローラーコースターでも行かないかと尋ねた

 スピーカーから流れるブレッドクラムトレイルに追い立てられて、よろめきながら編上靴を履く。ほぼ毎日聴くには、単調すぎる音。詩も異教徒的過ぎやしないだろうか?
「ここにいるんなら、大人しくしといてくれよ。
その服は少し目立つからね」
「そんなことないと思うけど、
むかつくから待ってるよ」
「途中で誰かに会ったかな」
「釣竿持った気違いがいたな」
 音の選者を末代まで呪いながら、扉を押し開けると、鼻先に飛び出す形で、目が合う。くそ。
 その男、フロレンスだ。波を巻いた黒髪に、貼り付けた笑顔。借りるとすれば、どこかの物語に出てきた例の犬に似ている。
「よう芸術家、
いい新月だね」
「そうかな、
見えないようだけど」
「そうさ。
微笑む月の暗い側に惹かれ、
描かれた姿に恋をする。
僕たちは想像力の、
それか人々に仕える、
澄み切った奴隷だよ。
純粋に形而上学的な意味でね」
「お前どういう意味か
分かって話してるのか?」
「なんだっていいだろ、
そんなもの存在した例がないんだから」
「そうだけど、言葉は言葉だよ。
我らが母なる歴史とは無関係だ。
前に言ったろ、
悪意じゃ僕らに見止められないってさ」
 合言葉の踏み絵だろうか。儀式的な厳かさで、ゆっくりと顔を見合わせると、ふたりは森の中の広場のひとつ、鯨の首つり紐に足を踏み入れるところであった。
「やあみんな。
いつものことだがね、
天秤が魚化している。
適度に間引いてきてくれ。
以上、解散」




 静けさだ。デッキの縁に座って糸を垂らす。投網を使ってる奴もいるけど、こっちのほうが僕は好きだ。他の人々も持ち場に引っ込んでしまって、釣られた星が消えるとき、その死にゆく光を通して、かすかな息使いが聴こえてくる。星は増えて絶えず、だから僕はここにいる。そうして唇は、彼は誰かの言葉をささやいた。

  目隠しのまま掲げる灯と
  もう一方は氷の白い手
  死者の温度に導かれ
  プラスティックの階段
  降り積もった塵どもの下層
  水銀に身を焦がれる海の
  月の光の底にいる

  亡きプラズマの動物たちを従えて
  私の眼は
  プロメテウスの末裔を
  いと尊き肉体を
  貫き 震える

 ここで君は考えてる。これは紛い物だ、そこには過去なんてなかった。

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